【3分でわかるシリーズ】足場ってどんな種類があるの?~住宅から超高層ビルまでの足場について~

そもそも足場ってなんだろう?という人が多いのではないでしょうか。住宅やマンションのリフォームで足場が組まれているのを間近に見たことがある人でも、あまり足場について意識して見たことがある人は少ないですよね(笑)。しかも、インターネットで調べても、足場の意味や役割を体系的に詳しく書いてあるものは意外と少ないんです。
そもそも建設業における足場の定義とは「高所作業を安全に、効率良く行うためのもの」を指します(当社定義)。では高所作業とはどんな作業でしょうか?
ここで、戸建て住宅での足場を例にとって見ていきます。
足場が求められる現場
通常2階建ての住宅を建てるときは、地盤調査から始まり、基礎工事で鉄筋コンクリートの土台を作ります(下部写真参考)。これが住宅の土台「基礎」となります。この上に、木造の家なら大工が木を組んでいき、家を完成させます。足場は「基礎」が出来上がった段階で登場します。
住宅の土台となる「基礎」。この基礎がしっかりとしているから、この上に住宅が建つ。この基礎の周囲に足場が架かる。
大工が木を組むとき、高い所に登るためには、上に登るための道が必要ですね。
また、木組みを終えるとそこに外壁工事・屋根工事・板金工事・電気工事などの様々な業者がそれぞれ工事を行います。その時に、高所で安全に作業するために必要なのが足場なんです。
なぜなら、脚立のようなものでも高所での作業はできますが、高くなるほど脚立は不安定で、ふとした拍子に倒れて事故につながる危険性が高いですよね。また、横に作業するときにいちいち下りて脚立を移動していると、とても手間がかかります。そこで、建物の周りに足場を架け、外壁や屋根などの工事を安全に、効率良く行います(下部写真参考)。つまり、足場とは「住宅を建てるために必要な工事の中で、高所での作業を安全に、効率良く行うために必要なもの」となるわけです。したがって、足場を使う業者が使いやすい足場を架けることが足場業者(以下、足場屋)に求められます。
木造2階建て住宅の周りに足場が架かっている様子。高所での作業を安全、効率的に行うために足場を架ける。住宅が建つ前に足場を架けるため、住宅の完成形をイメージして足場を架けなければならない。
足場を架ける難しさ
足場と言っても、住宅の形が千差万別なように、その住宅を建てるために必要な足場も千差万別です。その住宅ごとにどのような足場を架けたら良いかを考えて足場を施工することは簡単なことではありません。そして、イメージしてください。冒頭の文章に、足場は「基礎」ができた段階で組むと書きました。しかし、当たり前ですが、「基礎」ができた段階ではまだ家がないのです。何もない空間に完成後の家をイメージして、そこに必要な足場を組む。これは訓練しなければできません。そのイメージが実際のものとズレていると、工事がどんどん進むにつれて、不具合が出てきます。「庇(ひさし)の部分が足場にあたる」「足場と壁までの距離が離れすぎてて工事できない」。このような事態になってしまいます。いくらそこに住宅の土台の「基礎」があっても、最終的に出来上がる住宅には基礎だけ見てもわからない箇所がたくさんあります。シャッターボックス・ヒサシ・雨樋いなど。そうした情報も図面から読み取らなくてはなりません。足場屋は、ただ単純に足場を組むだけではなく、そこにはまだない家の完成形をイメージする力、そしてそれを図面から読み取る力が必要なのです。
新築現場と改修現場
そして、先ほど述べたのは、「新築現場で足場を架ける」場合です。実際には新築住宅のへ足場工事だけでなく、リフォームのための足場工事もします。これを「改修工事」と呼びます。例えば戸建て住宅で言えば、メンテナンスのために10〜15年に1回、外壁の洗浄や塗替えをします。このような工事の場合、足場を組む時にはすで住宅があるため、実物がある分、新築工事に比べ足場を架やすいように見えます。しかし、改修工事ではすでに家が建っている分、足場を架ける時に使用できるスペースが狭くなるので、その分材料の運搬・搬入も大変ですし、何より足場部材を運搬中に家の壁を傷つけてしまったり、置いてあるものにぶつけて壊してしまったりというリスクもあります。一方で、新築現場と異なるのは、そこにはすでに家があるので、組む足場がイメージしやすいという点です。どちらが簡単・難しいというわけではありませんが、足場の施工時間で見れば、改修工事の方が新築工事に比べて時間がかかります。
以上のように、足場工事では主に「新築現場」での組立・解体、「改修現場」での組立・解体があります。その他にも、住宅内部に広い吹抜スペースがある場合は、室内であっても足場を架ける時があります。これを「内部足場」や「吹抜け工事」と呼びます(下部写真参考)。足場は外部だけでなく、内部に架ける場合もあるんですね!
マンションの階段部分の内部足場。一般の人が通る部分の足場なので、足場に虎柄の“パイプガード”と呼ばれるクッション材を取り付け、ぶつかっても怪我しにくいように配慮されている。
低層工事と高層工事
先に述べたのは、戸建て住宅への足場の施工のケースです。これに対し、工場・4階建て以上のマンション・ビルなどの大型物件への足場施工もあります。大久保恒産では、主に戸建て住宅への足場施工を「低層工事」、大型物件への足場施工を「高層工事」と呼んで分けています。高層物件への足場施工は戸建て住宅の延長線と思われがちですが、その内容は全く異なります。低層物件への足場の施工は、主流の規模の住宅(100㎡前後の住宅)であれば、職人2〜3人で1日約2棟の施工量となり、他の業者と同時並行で工事が進むことは少ないです。一方、高層物件の場合、足場を架けるのに、短い物件で1週間前後、多くて10日〜2週間、時には1ヶ月前後かかる物件もあります。さらに、足場の施工中も、鉄筋工や型枠大工など、様々な業者が出入りするため、足場の知識だけでなく、関係する業者の工事のことも考慮しなければ、スムーズな現場作業を行うことができないため、より広い知識が必要となります。そのため、同じ足場工事でも、「低層工事」と「高層工事」では、事業内容は全く異なります。
横浜・中華街にある高さ13mを越える「西陽門」へ足場を架けた時の写真。中華街の門のような建造物への足場工事は珍しい。中華街は、日中人通りが多いため、夜勤を中心に足場を架けた。
低層と高層
「低層」と「高層」という呼び方も、建設業では一般的ですが、建設業に携わっていない人たちにとってはあまり馴染みのない言葉です。
でもなんとなく「低層」は低く、「高層」は高いものを指してるのかな、というのは想像できますね!
「低層」「高層」とは、建築物を高さによって区分する時の呼び方で、それぞれ「低層建築物」「高層建築物」の略です。
実は明確な定義はないんです!
が、実務上では高さによる建築物の区分を
低層建築物:1~3階建の建築物(高さ10m以下)
中層建築物:4~5階建の建築物(高さ10~20m)
高層建築物:6階建以上の建築物(高さ20m以上)
超高層建築物:60m以上の建築物
のように分けてます(あくまで参考の数値です)。
分け方も会社や職種によって違います。
大久保恒産では1~3階建の建築物を「低層」、4階建以上の建築物を「高層」と呼び、それぞれの物件への施工は部署が異なり、それぞれ「低層工事部」と「高層工事部」に分かれています。
と、まあこんな風に分けてますが、高さで部署を分ける意味はあるのでしょうか?
実は大ありなんですね!
高層と低層では工期や人の出入りが違います。例えば下の写真の現場。
この現場は低層物件ですが、だいたい職人さん2~3人で3~4時間程で足場を完成させてしまいます。
このような物件への足場の組立または解体を1日に2件程行います。
一方こちらの現場。
これは高層物件ですが、職人さん6~7人で約5日間で足場を完成させました。
このように、ひとつの物件を完成させるまでの工期や人工(にんく:人数×日数)が全く異なるため、工程の組み方や現場管理の方法も全く異なります。
大久保恒産では、主に、低層物件は低層工事部が、高層物件は高層工事部が行っていますが、いつでもどちらの物件も扱えるように、十分な施工力を身に付けています。