大久保恒産の3大番頭!職人の育成を何より大切にしている理由とは

【PROFILE】
三井 雅樹(みい・まさき)。低層工事部副部長。1969年東京都大田区生まれ。小学1年生からサッカーを始め、中学時代は相模原のクラブチームに選抜された程の実力を持つ。1988年神奈川県立弥栄東高等学校を卒業。高校時代は、3年時にサッカー部の部長を務める。卒業後も、地元の社会人チームに所属し仕事よりサッカー中心の生活をしていた。高校卒業後約10年間は電気工事関係の仕事に従事し、1998年6月に中途採用で大久保恒産に入社。低層工事部配属になり、現相内組の山本社長の下で番頭仕事のいろはを教えてもらい一つの課を任せられるようになる。この山本社長に教えてもらった大久保魂は今でも自分の仕事の基本となっている。課の運営はサッカーチームの運営と似ており、その時の経験を仕事にも活かしている。2011年より、現在の低層工事部副部長となり、若手の教育に力を入れている。
好きな言葉:己の欲せざる所は人に施すことなかれ
大久保恒産 3大番頭の1人、三井 雅樹副部長
三井は、1998年6月に大久保恒産に入社。前職では電気工事士を勤めていたが、建設業界の景気が悪くなった影響で仕事が減り、当時大久保恒産に勤めていた知り合いに相談したところ「一緒に働かないか?」と誘われたことがきっかけだった。
「もともと体育会系だし、前職でも体を使う仕事をしていたから体力には自信があったのね。だけど、そんなの関係ないレベルで大変だったよ。本当に死ぬかと思った(笑)」と笑いながら入社初日を振り返る。
想像していたよりも遥かに大変な足場業界で、未経験からのスタートを切った三井。現在は低層工事部副部長として、職人たちを育て、まとめあげ、目標に向かってひっぱっていく存在となり、「大久保恒産の3大番頭の1人」と言われるまでになったその理由は何なのだろうか?
「大久保恒産の人間として、感謝の心を持った職人を育てること」に徹底的にこだわる上司から学んだ、教育の重要性
一つは、元上司である山本(現 相内組 代表取締役社長)の存在である。山本のもとで、一職人として、一番頭として、そして一指導者として、大久保恒産の教育の水準の高さや、教育の重要性を間近で学んできた。
「俺に大久保恒産イズムを教えてくれたのは山本さん。山本さんと一緒に仕事していなかったら、山本さんに会っていなかったら、今ここにいないと思うよ」
当時三井が所属していた山本班は、社内で一番小さい班だった。人が少ない上に、所属している職人は気難しい性格の職人ばかり。コントロール出来ないことが多く、そのため、売上も思うように伸びなかった。
「経験や技術があって、すぐに成果を出してくれる職人を採用したほうが早い」誰もがそう考えるような状況で、山本は「一から育てないと駄目だ」と言い張った。
社員旅行での1枚。左が三井、右が山本。
「山本さんは、目の前の売上よりも『大久保恒産の人間として仕事をすること』に徹底的にこだわっていたんだと思うよ。経験のある職人さんというのは、それぞれの考え方ややり方が既にあるからね。だからって、その職人さんの考え方に任せたら、それはもう大久保恒産の仕事じゃないんだよ。ベースに、大久保恒産が大切にしている『感謝の心』がないと。はじめは時間がかかるけど、同じ価値観を持ったチームを作ることができたら、みんなが同じ方向を向いて、大久保恒産らしい最高の仕事をしていけるようになるじゃない?」
山本と三井は、0から班作りを始めた。みんながあまり採用したがらなかった未経験者を採用しながら、職人としての技術的な面はもちろんのこと、大久保恒産の人間としての礼儀やマナー、現場への入り方や時間に対する考え方までを徹底的に教えていった。
結果、三井の所属していた班は、会社で一番小さな班から、たくさんの職人を抱え一番売上の多い班へと成長した。この経験から、三井は大久保恒産の教育の水準の高さと教育の重要性を実感する。
「みーさんの班には行きたくない」と職人に言われて初めて気付いた「厳しいだけでは、職人はついてこない」ということ
その後三井は、大久保恒産に無くてはならない番頭へと成長。大久保恒産イズムを継承する職人をプライドを持って育成することにやりがいを感じていた。
特に厳しくしたのは、朝の集合時間と現場でのマナー。毎朝6:30集合は絶対、朝礼は欠かさず、その他にも状況に合わせて様々なミーティングを開催した。現場の到着時間から、トラックは何を使うかまで、全てを指定した。自分のイメージ通りに職人を動かせば、トラブルや仕事の遅れなどは発生しないし、効率よく仕事をこなしていける。そうすることが、番頭の仕事だと信じていた。
「みんなに聞いたらわかると思うけど、昔からいる職人からは、俺は鬼だと思われていると思うよ。暴走族にいたようなやんちゃな子でも、真面目になっちゃうくらい厳しかった。昔は『大久保恒産は更生施設だ』って言われていたんだから(笑)。それくらい、『雇ったからにはどんな子でも責任持って立派な社会人に育て上げよう』という意識が先輩たちにはあったし、俺もそうやって育ててもらったから教育を頑張ろうって必死だった」
「厳しいだけの男」ではダメだと気付いたのは、研修を終え、これから配属先が決まるある新人が言った一言がきっかけだった。「三井さんの班には行きたくない」と言うのだ。
「ある一定のレベルまではついてくるけど、厳しさだけだと限界があるんだってその時気付いたよ。『これも出来るだろ、あれも出来るだろ』ってスケジュールをいっぱいに詰めて、全部コントロールされて、早く帰れる日なんて無かったからね。忙しくて、厳しくて、その代わりすごく稼いでいたから、当時ついてきてくれていた職人のモチベーションは給料だけだったんじゃないかな。そんなの、お金だけの付き合いになっちゃうよね。当時の番頭で人気投票やったら最下位だよきっと(笑)。
やっぱり、番頭としては、『大久保恒産で良かった』、『三井さんの班で良かった』って言ってもらえるのが一番じゃない」
番頭に求められる力は、スキルや知識、厳しさだけではない。人の心も掴めるような人間でないと、職人はついてこない。思えば、自分が大久保恒産で働く理由もそうである。
「俺は、社長のために、陽介(大久保陽介)のためにって働いてきたし、これからもそうやって働いていきたいと思っているんだよね。大久保和男が好き。社長って、すごく厳しい人だけど、情に熱いんだよね。これって職人が求めていることで、だから社長は人の上にたてるんだと思う。本気で愛して本気で叱ってくれる大久保和男のファンって、大久保恒産にいっぱいいるよ。俺には、その『情』の部分が無かったんだよね」
前列右で座っているのが大久保社長。後列右から3番目が三井
「どこの足場屋さんにも負けないよ」プロとして働く、自慢の職人たち
そのことに気付いてから、三井は変わった。「今日は頑張ったね」「お疲れさん」などという、これまではなかなか伝えてこなかった職人に対する感謝を伝えるようになった。
「お客様に対してはいつも言っていたけど、伝えていなかっただけで、同じように職人にもいつも感謝しているんだよね。なかなか照れくさくて言いづらいけど、今は意識的に伝えるようにしているよ」
職人をコントロールすることも、やめた。一週間分の工程表を共有し、全てを職人に委ねた。はじめは「もっとこうした方がいいのに」などと歯がゆくなることもあったが、職人を信じて見守った。
「自分で見て自分で考えて自分で試行錯誤していくほうが、結果的に育つんだよね。全てをコントロールしていたことで、職人達が自主性を失っていたことに気付いたよ」
次第に、指示したことしかこなさなかった職人たちが、自分たちで工夫する場面が増えてきた。「ちょっと早く終わったので、明日の仕事を少しやってきました」と報告を受けたり、「この現場、そろそろ何か出来ますよね?見に行ってきましょうか?」などと提案を受けることも増えてきた。
「ベースの考え方や価値観を共有することができれば、あとはそのベースをもとに職人たちがどんどん意思決定して仕事を進めていけるんだよね。今もそこは徹底的に教えているよ。だから、うちの職人達は基準が高い。どこの足場屋さんにも負けないよ」と三井は誇らしげに話す。
新社屋お披露目会での1枚。三井さんは司会を務められました。
一流の番頭として活躍しながら、三井は次のステージを見据えている。
「これまでは『やるなら一番じゃないと!』って、自分の課を一番に考えてやってきたけど、今は工事部の副部長として、もっと工事部全体を見ていかないとダメだと思ってる。これまでの良いところは残しつつ、更にステップアップしていくために、お互いを尊重して、相乗効果を生んでいけるようなやり方を模索していきたいね。
後輩の番頭たちにも、『昔の良さは教えつつ、大久保恒産が更に飛躍していくために新しいことにもどんどん挑戦していきなさい』と教えていくよ」
編集後記「徹底的に教育する姿勢は、職人に対する愛があるからこそ」
インタビュー後、町田の千寿閣で開催された「大久保恒産 新入生歓迎会」にお邪魔させていただきました。
三井さんの姿を発見すると「みーさん!」と笑顔で手を振りながら駆け寄ってくる新卒の職人。新入生歓迎会の中で催されたカラオケ大会ではマイクを取ってみんなを盛り上げ、三井さんが投げかける無茶振りに、困った顔をしながらも、嬉しそうに全力で応える後輩たち。三井さんの人望を厚さを垣間見た気がします。
実は、こちらのサイト「足場の世界から」も毎日見てくださっているそう。
「若い子が考えていることが分かるから、毎日更新を楽しみにしているよ。若い子だけじゃなくて、まっちゃん(総務部 松岡)の記事を読んだ時は『そういう考えもあるんだな』って勉強になったしね。みんなが考えていること、何でも知りたいって思うからすごく楽しみにしているんだ」
社員たちのことを常に考え、大久保恒産を盛り上げるムードメーカー的存在の三井さん。「仕事は嫌いだけど、大久保恒産は好き。大久保恒産だから頑張れるんだよね。遊んでいる方が好きだもん(笑)」そう笑いながら話して下さいました。
仕事には一切の妥協を許さず、厳しく教育する。それは、「大久保恒産の人間として働くからには業界最高峰レベルの職人になってもらいたい」という職人たちに対する愛があるからこそなのだろうなと感じたインタビューでした。
こちらは大久保恒産の番頭と職人でゴルフへ行った時の1枚。