大久保恒産の4大稼ぎ頭の一人が語る、「足場職人」の魅力とは?

【PROFILE】
細井勝敏(ほそい・かつとし)。2006年に大久保恒産へ職人として仕事を始める。大久保恒産の社員と職人の協力会「親和会」の現会長(2016年7月当時)。趣味は乗り物で、休日は車やロードバイクで走りに行っている。
細井さん、本日はよろしくお願いします!細井さんが大久保恒産を知ったきっかけはなんですか?
前職の同僚からの紹介です。
そうだったんですね!前職は何をされていたんですか?
運送会社で中型トラックのドライバーをしていました。実家をサポートするために仕送りを送っていたので、「とにかく稼げる仕事がしたい」って話していたんです。そしたら、大久保恒産で働いたことがある同僚が「自分は腰を痛めてしまって療養中だけど、俺もすごく稼げたから細井さんなら稼げると思うよ」って大久保恒産を紹介してくれました。
稼ぎたくて足場職人になられたんですね。実際、細井さんは「大久保恒産の4大稼ぎ頭」の一人だと伺いました!
これまでもいろんな仕事をしてきましたけど、足場職人が一番稼げますね。
ただ、足場職人の中でも親方が稼げるので、私の場合は「3ヶ月で親方になれなかったら辞めよう」と自分の中で決めていました。
※当時は最短3ヶ月で親方になることができました
たった3ヶ月で親方になられたんですか!?とても大変な3ヶ月だったのではないでしょうか?
はい、大変でした(笑)。私は8月に入社したので、部材は重いし、暑いしではじめは辛かったですね。でも、辞めようと思ったことはありません。
「3ヶ月で親方になる」という目標があったからでしょうか?
もちろんそれもありますが、純粋に「足場」という仕事が楽しかったし、先輩たちの背中を見て「かっこいいな、自分も早くあんな風になりたいな」って思えたからでしょうね。
目標にしたい先輩がいるのはモチベーションも上がりそうですね!「足場職人」という仕事のどんなところが楽しかったのでしょうか?
足場の仕事は、大きく分けると「組立」と「解体」という2種類の仕事があります。例えば、新築の解体の現場だと、完成した家を一番最初に見れるのがその足場を解体した足場職人なんですよ。一生懸命バラして、完成したばかりの新築がぱっと現れると、まるで自分がすべて建てたかのような感動というか達成感があります(笑)。
あとは、大久保恒産にはどんどん任せてもらえる環境があるので、自身の成長がダイレクトに感じられる点も楽しいですね。入社当初、私は早く成長したくて每日のように図面を書く練習をしていました。それを、先輩に見せて修正をもらって、また直して・・・と繰り返していたのですが、2ヶ月たった頃、先輩が「本番の図面やってみる?」と声をかけてくだいました。いざ挑戦してみると、またそこで新しい気づきがあるんですよね。先輩からもらうフィードバックを見ながら、「そっか、こんなところにも目を向けなければいけないんだ」などと新しい発見があるのがとても面白かったです。
大変ながらも、3ヶ月とても楽しまれたんですね!
はい、3ヶ月たつ頃にはすっかり足場が好きになっていました。とはいえ、実家を支えたかったので「3ヶ月で親方になれなかったら辞める」という考えは変わっていませんでした。
なので、3ヶ月目の最後の日は、仕事が終わってからずーっと電話を握りしめて電話が鳴るのを今か今かと待っていました。でも、夜になっても鳴らなかったんですよ。
えっ、そうなんですか?
音沙汰が無いことに落ち込んで、「親方になれなかったんだ。悔しいけど、明日仕事を辞めよう」と諦めていました。そしたら、23時に電話が鳴って「明日から親方だから、頼むよ!」って言われたんです。あんなに嬉しい出来事は久しぶりで、思わず一人でガッツポーズしてしまいました(笑)。
とんだサプライズですね(笑)。親方という立場になってみて、いかがでしたか?
「親方って、同じ景色をこんなに広い視野で見ていたのか」というのが最初の感想でしたね。「連れて行ってもらう立場」から「連れて行く立場」になるだけで、これだけ分からないことが増えるんだ、ってこれからを不安に感じたのを覚えています。
具体的には、どんなところが大変だったのでしょうか?
私はずっと三井さんという番頭さんの元でやっているんですけど、厳しい番頭さんなのですごくたくさん仕事をいれてくれるんですよ(笑)。たくさん仕事いれてもらって、終わらなくて、怒られて・・・っていうのがはじめのうちは大変でしたね(笑)。
それは大変そうです(笑)。三井さんもご自身で「厳しい番頭だった」と仰っていました。
でも、そこには三井さんの意図があるんですよ。段々とですが、その本当の意図が分かるようになってからは仕事に対する取り組み方が変わりました。
本当の意図、ですか?
はい。たくさんの仕事がきたら、「終わらせる」と決めて「終わらせるためにはどうしたらいいのか、どうやったら達成できるのか」と目標から逆算して方法論を考えるんです。三井さんは、その考え方を身に付けさせてくれたと思っているんですよね。
あとは、仕事に対する向き合い方も変わりました。
写真右が低層工事部の番頭 三井さん。三井さんのインタビュー記事は『大久保恒産の4大番頭!職人の育成を何より大切にしている理由とは』からお読みいただけます
どう変わったのでしょうか?
なんとか与えられた量もこなせるようになってきて「これ以上の仕事量はないだろう」って思ったらボーンってすごい量がまた入ってきたんですよ(笑)。限界を突破していく度に、自分のキャパとかレベルが上がっていきました。
次第に、また次のステージがきたら「よし、ちょっとやってやろうかな」っていう楽しみに変わっていったんですよ。
つまり、自分が成長していく過程には乗り越えることが大変な壁とかがあるわけですけど、その壁をどんな気持ちで乗り越えていくのか、その姿勢が変わったんです。
なるほど。壁が現れると足が竦んでしまいがちですが、そこを楽しんで越えられたら成長するスピードも早くなりそうですね!
もちろん、そういう挑戦が続くとさすがにフラフラに疲れてしまうんですけど、「もう明日は無理だ!」って感じた次の日は工程が甘くなってたりするんですよね。分かっていてなのか、偶然なのかは分かりませんが(笑)きっと良く見ながら調整してくださっていたんだと思います。
「限られた時間で良い仕事をたくさんこなす」というのは簡単なことではありません。ですが、そこにチャレンジする上で「できなかったらどうしよう」とあれこれ考えて手を止めるのではなく、まずは担ぐことを楽しむことが大切だと後輩たちにも伝えています。後輩が大変そうな顔をしているときは「気持ちいいだろ?」とか「死ぬわけじゃないから大丈夫」って声かけながら引っ張っています(笑)。
細井さん、ストイックなんですね〜。すごいです。そこまで頑張れる理由は、やはり「足場が好きだから」なのでしょうか?
昔はそうだったんですけど、チームを抱えるようになってからは「教える、育てる」というところにやりがいを感じています。
さすが「建設業界で一番人が育つ会社」の親方ですね!育てる上で、どんなところにやりがいを感じるのでしょうか?
「育てる」って、ちょっと難しいじゃないですか?口で何度も言っても伝わらなかったことが、自分のしぐさを見たらすんなり理解してくれたりとか、意識している間は全く結果が出ないのに、無意識の部分で成果が出ることがあったり。
教える立場になってから気付いたんですが、私自身「ああでもない、こうでもない」って言いながらみんなで仕事するのが好きなんですよ。せっかく一緒に仕事をするチームなのに、現場に行っていてただただ仕事をこなすなんて面白くないですからね。でも、それも言い過ぎると後輩たちはついてきませんし、そういう簡単にはいかないところが楽しいですね。
決起大会で親和会会長として挨拶をする細井さん
「難しいことが楽しい」とおっしゃる細井さん、やっぱりすごいです!育てていて特に嬉しかったことはありますか?
育てている子が、他の職人についてやっている現場をたまたま通りかかった時に、身のこなし方とかやり方が「なんか俺っぽい」って感じた時はたくましさを感じてなんだか嬉しかったですね。「抜かれたくない」っていう気持ちもあるから複雑ですけど(笑)。
あとは、私はいつも現場についたら「部材配るの競争な!」っていつも競争しているんですけど、最初のうちは圧勝するんですよ。でも、今では気を抜くと負けちゃうくらい後輩たちが成長しました。言い訳するのも嫌だから悔しいですけど(笑)、「こんなに成長してくれたんだ」って嬉しくなりましたね。
後輩の成長を感じられた時が嬉しい瞬間なんですね。
そうですね。先日は、大変な仕事をしているときに「これ終わるかな?ちょっとやばいな」って時があったんですよ。そしたら、特に電話で応援をしたわけでもないのに状況を察して後輩が現場に駆けつけてくれたんです。「お前〜サプライズすぎるだろ〜(泣)」って泣いてしまいそうでした(笑)。
大久保恒産は昔から、持ちつ持たれつの関係で仕事をしてきました。それは、チーム制を導入する前からです。「いい人たちといい関係を築いて、お互い助け合いながら『チームで』成果を出すことが大切だ」といつも伝えているので、そこをきちんと理解してくれているんだなと感じた出来事でしたね。
大久保恒産、そして細井さんが大切にしている価値観がしっかりと後輩さんたちにも受け継がれているんですね。今後の目標はありますか?
この仕事をやるにあたって、「全員を稼げる職人に育てる」というのをひとつ目標としています。
というのも、ただただ目の前の仕事をこなすだけではいつまでたっても稼げる職人にはなれないんですよ。目の前の仕事をやりながら、視野は広く持って「次はここのこれが出来るな、あっちはこれが出来るな」って全体の先を常に見れるような職人が稼げる職人だと思います。
この前、村野さんと一緒に現場に行ったんですけど、村野さんはまさにそういうことができる職人さんです。「あんな仕事をしていたのに、今これをやっているなんて、いつ考えていたんだあの人は?」って驚く場面がたくさんあって、作業中なのに村野さんが気になって仕方ありませんでした(笑)。
私自身、そういう職人でありたいし、全員を稼げる職人に育てる上げるためにも、「仕事の流れが良くなるには?仕事の速さに繋がることは?それでいて、安全かつ効率よい作業とは?」といったことを一人ひとりが考えられる職人に育て上げていきたいと思います。
細井さん、ありがとうございました!
忘年会での一枚。
編集後記「『建設業界で一番人が育つ会社』にみる師弟関係」
細井さんを取材させていただく前から、「細井さんといえば三井さん」「三井さんといえば細井さん」などと大久保恒産の方たちから聞く機会が多くありました。取材当日も、ソワソワと一番弟子である細井さんの取材風景を見守る三井さんの姿があったほどです(笑)。
写真右が番頭の三井さんです。「今日は帰ったら、お祝いのビールを飲んでから寝たいと思います」と細井さん。
細井さんに「三井さんはどんな人ですか?」と訪ねてみると、「まず、怖い(笑)」とひとこと(笑)。
「ただ、言葉は厳しいんですけど、その中にはすごく思いやりとか優しさがあるんですよね。『こうだよ』って言われたことに対して『なぜその言葉を私に言ったのか?』という言葉の背景を考えると、三井さんの想いが受け取れるし、そうやって考える癖がついたことはトレーニングにもなりました。
というのも、現場へ行ってもそういう風に少ない情報から多くのことを読み取って、考えて、意思決定しなきゃいけない場面ってたくさんあるんですよ。この思考の癖は現場ですごく活きています。結果、さらに仕事の成果でも三井さんに応えられるようになりますしね」と話して下さいました。
そこで、三井さんにも細井さんのことを伺ってみると、
「細井チームはね、いいチームに成長したよ。みんな自分勝手そうに見えるかもしれないけど(笑)、すごくまとまっているんだよね。そして、『仕事を絶対にこなしてやろう』という意識がすごく強い。細井のいいところをチームの皆が継承していて、ガツガツ仕事やるんだよ。
だから、細井とは長い付き合いだけど、文句とか『できません』って言われたことは一度もないよ。俺は厳しい工程を組むことが多いから、その工程を見て『これはできませんよ』っていう職人多いんだよ。『できません』と言われたら必ず叱るんだけどね。細井には、叱ったことがない。まあ、言っても無駄だと思っていたのかもしれないけどね(笑)
番頭って誰にでも右腕的存在の職人が絶対にいるんだよね。名田くんの場合は小池、鳥羽の場合は伊藤っていう感じで。俺の場合は、それが細井。『こいつに頼んでいれば間違いない』って思ってるよ。もちろん、職人と番頭は信頼関係で結ばれていることが大切だから、職人みんなのこと信頼しているけど、その中でも細井は優秀だね。・・・言いたくねえなあ(笑)」と照れながらも大絶賛。
正直、お二人の話を聞いていて「なんだ、この相思相愛は!」と驚きました。
吉田松陰の言葉に「師道(しどう)を興(おこ)さんとならば、妄(みだ)りに人の師となるべからず、又 妄(みだ)りに人を師とすべからず。必ず真に教うべきことありて師となり、真に学ぶべきことありて師とすべし(意訳:師弟のあるべき道を求めるならば、安易に師となるべきではなく、安易に弟子となるべきではない。必ず本当に教えるべきことがあって師となり、本当に学びたいことがあって師につくべきである)」という言葉がありますが、本当に、お二人の上司と部下を超えた師弟関係は、お互いの「本気」「覚悟」があってのものだと思います。
「建設業界で一番人が育つ会社」として、師匠も、弟子も、覚悟を持って本気で仕事に取り組むからこそ生まれる信頼関係が大久保恒産にはあるのだなと感じたインタビューでした。