入社20年目のベテラン社員職人に聞く「大久保恒産はなぜ仕事が多いのか?」

【PROFILE】
鈴木清(すずき・きよし)。1994年に職人として大久保恒産へ入社。2005年より社員職人となる。趣味はお酒で、特にビールが好き。大久保恒産の野球部に所属しており、毎週日曜日の朝は、大久保恒産の職人と共に「ワンハッピー」というソフトボールチームで活動している。
鈴木さんは、31歳のときに大久保恒産へ入られたんですよね。前職は何をされていたんですか?
義理の兄と型枠大工をやっていました。8年くらいやっていたんですけど、バブルが崩壊したときに会社が潰れちゃったんですよ。
そうだったんですね。
そのあと大型免許を取得して長距離トラックの運転手をやったんですけど、どうも肌に合いませんでした。型枠大工をやる前は大手重工業メーカーで勤めていたのですがそちらもすぐに辞めてしまったので、やっぱり自分には建設業界が合っているのかなって思ったんです。
それで、大久保恒産へ入社されたんですね!
はい。大久保恒産のことは新聞折込の求人広告で知りました。大工の仕事をずっとやってきていたし、足場職人として働くイメージもすぐ湧きました。
入られてみて、実際どうでしたか?「想像を絶するくらい大変だった」って仰る方が多いのですが・・・(笑)
図面とか足場もすぐ覚えられたし、稼げたし、居心地もいいからそのまま今に至るって感じです(笑)
おお、さすがです!やっぱり大工の経験が大きいのでしょうか?
仕事面に関してはそれもあると思いますが、大久保恒産は人間関係が良いからすごく居心地が良いんですよ。アットホームっていうんですかね。特に、私が入った頃はまだ30人くらいの規模だったので、みんなが一致団結したときの勢いというか結束力は物凄いものでしたよ。
でも、私は「安定して仕事がある」という点が何よりも素晴らしいと思っているし会社に感謝しています。
「安定して仕事がある」ですか?
はい。型枠大工の頃は、仕事がある時期と仕事のない時期で差が激しかったので、仕事がない時期は全然稼げなかったんですよ。稼げていないので給料が半値になって、しかも支払いも遅れるという結構大変な生活を送っていました。経営が傾いてからは、給料すら出ませんでしたね。
「仕事があるのは当たり前」「給料は支払われて当たり前」って思っている人は多いかもしれないですけど、「仕事を受注する」「給料を支払えるだけの収入がある」ってすごいことなんですよ。
確かに、大久保恒産が安定した黒字経営を48年(取材当時)も続けているのはすごいことですよね。
私は大久保恒産へきて20年以上たちますが、一度も仕事がなくなったり給料の支払いが滞ったことはありません。
「大久保恒産に仕事を頼みたい」と思ってもらえる信頼とブランド、そして大久保社長の「社員の生活を守る」という思いがあるからこそだと思います。
「信頼」と言えば、「雨の日でも現場に出る」ということをやり始めたのは実は私なんですよ。
えっ、そうなんですか?確かに、村野さんにインタビューした際「昔は雨の日は休んでいた」と仰っていましたが・・・
そうなんですよ。でも、足場職人という仕事を始めて「雨でもできるじゃん」って思ったんです。もちろん滑りやすいなど気をつけなければいけないことは増えますが、注意を払って仕事すれば出来ないことはありません。そこで、雨の日でも「俺、できるんで行ってきます」って雨の中仕事を始めました。
そうだったんですか!すごいですね!
当時は「稼ぎたいから」っていう理由でたくさん仕事していただけなんですけどね(笑)。
でも、そうやって一生懸命やっているうちに、3年後には給料TOP3に入っていました。上に立つ人が雨の中働いていたら、当然若い子もついてくるじゃないですか。それで、「大久保恒産は雨の日でも働いてくれる足場屋さんだ」ってなっていったんです。今では、雨だろうが雪だろうが当たり前のようにみんな仕事していますよ。
鈴木さんも、大久保恒産の信頼とブランドを築き上げてきたおひとりなんですね。
そうだといいです。そうそう、昔は単管足場(単管というパイプと、パイプとパイプをつなぎ合わせるクランプを主に使って足場を組み立てる方式)が主流でしたが、くさび足場(クランプを使わず、くさびとポケットのみを使用した、ハンマー1本で足場を組み立てる方式。単管ブラケット足場よりも技術習得期間と施工時間が早く、現在の主流になっている)を使うようになったのも私たちが同期と始めたことなんですよ。
えっ、そうだったんですか!?
会社が、せっかく新しく発表された「くさび足場」の部材を買ったのに、誰も使ってなくて蜘蛛の巣張っているのを見つけて、「せっかく資材があるのに活用できていないのはもったいないね」って話になって。それで、くさび足場の組み方を知っていた先輩に教えてもらって、使い始めたんです。
そしたら、くさび足場を見た元請けさんが「これ、すごくいいね!」って言ってくださって。それで、次第にくさび足場が主流になっていきました。
仕事のやり方を変えた上にくさび足場を主流にしたなんて、鈴木さんパイオニアじゃないですか!すごいです。これからやっていきたいことはありますか?
やっぱり、若手をどんどん育てていきたいですね。自分の分身を育てたいなあなんて思うこともありますけど、やっぱり性格も考え方も人それぞれだから、その子らしい良さが育つように合わせて育てていこうと思っています。育てるからには、私を越えてくれるような職人に育って欲しいですね。
鈴木さんを超えるような職人さんを育てるために、いま若手に伝えていることはありますか?
「スピードじゃないぞ」と伝えたいですね。
どういうことでしょうか?
とにかく、はじめのうちは基本を徹底的に身に付けてもらいたいんですよ。スピードは慣れてくればいくらでも早くなります。でも、スピードを優先するあまり怪我や事故に繋がりやすい仕事の仕方を身に付けてしまったり、雑な仕事をするようになってしまっては元も子もないじゃないですか?
確かにそうですね。
次の現場のことを考えて焦ってしまう気持ちは良く分かるけど、まずは安全に、質の高い仕事をするための基本を完璧に身に着けることが大切なんです。
それが出来てから、それらをもっと早くこなせるような身のこなしを覚えていけばいいんです。焦らずに、ひとつずつこなしていけばいいんですよ。
まずは「常に冷静でいる」「焦らない」「安全第一」「質の高い丁寧な仕事」といったキーワードを重視して、みんなが基本に忠実に、安全第一で作業していけるようになることを目指したいと思います。
鈴木さんの教育で、これから若手の職人たちがどんな成長をしていくのか楽しみですね。本日はありがとうございました!
編集後記「大卒の社員職人を育てる、ベテラン職人」
鈴木さんのもとで現場研修をした、2016年4月入社の新卒社員職人さんが、先日こんな話をしてくれました。
「鈴木さんと、僕ともう一人の同期と3人チームで研修していただいたんですけど、『3人で作業するよりも、俺一人でやったほうが早く終わる』って言われちゃったんですよ。
チームの中に一人でも、目の前のことしか視野に入らず、ただがむしゃらに作業をする人間がいると、邪魔になるし効率も悪いしチームとして機能しないんです。
一人ひとりが作業しながら頭もフル回転させて、どの場所をどのタイミングでどんな風に作業するのか、考えていないと良い仕事ができないことに気付かされてすごく勉強になりました」と。
この新卒社員職人さんの学びももちろん素晴らしいのですが、一見厳しいともとれる鈴木さんのフィードバックに私は非常に愛を感じました。
「この子はまだこのレベルだから」「この子は大体、ここぐらいまでならできるだろう」といった、その人のレベルに合わせた優しい言葉は、実はその人が秘めている可能性を制限することにもなりかねないと思うからです。
その点、鈴木さんの「足場職人をやるからには、俺を超えてもらいたい」という一切の妥協を許さないぶれない基準は、本当に素敵だと思います。
若手の可能性を信じ、期待と愛を込めて厳しく指導する鈴木さんのもとで働く社員職人たちが、これからどんな成長を遂げていくのかとても楽しみです。